特集
廃プラスチックで発電、24,000世帯分に相当する電力を供給
─燃焼温度ムラをなくすため燃料のブレンドにひと工夫─

企業や事業所から排出される廃プラスチック類を再資源化(サーマルリサイクル)することによって、24,000世帯分の使用量に相当する電気に変えて電力会社に供給する─世界初の廃プラスチック専焼サーマルリサイクル発電所は2003年に操業を開始しました。北海道・苫小牧市の東部に位置する(株)サニックスエナジー((株)サニックスの100%出資会社)です。

03年10月に営業運転を開始しましたが、最大の特徴は、その燃料が100%廃プラスチック類であることに加え、74,000kWの電力を北海道電力に売電供給していることです。

今でも、企業関係者、業界関係者をはじめ高校生・小学生など、多くの見学者が来訪、特に小学生は「あのプラスチックが電気に……」と驚くそうですが、この発電所を建設するそもそもの動機や、廃プラスチック類をサーマルリサイクルする上での難題はなんだったのか、などについて同発電所を訪ね、取材しました。

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発電所建設の動機は「捨てるのはもったいない」

同社グループの工場(廃プラスチック類の中間処理工場)は全国に16個所あり、企業や事業所などから排出される廃プラスチック類(産業系廃プラ)の処理を目的に設立されましたが、ひと昔前までは埋め立て処分するための減容が中心でした。その当時からエネルギー資源が有限であることは広く知られていた状況の中で、「ただ埋め立ててしまうのは、いかにももったいない。再資源化できないものか…」との思いが、期せずしてサーマルリサイクル発電所の建設に結びついたとのことです。こうして、国内外では例を見ない廃プラスチックのみを熱源にしたサーマルリサイクル発電所が誕生したわけです。

当初、関連子会社ではRPF※1の製造ライン建設も計画しましたが、それを造るために余分なエネルギーを使うよりは直接エネルギーを作り出すことを考えた方が遙かに効果的であり、エネルギー消費も押さえられるとの結論に至った訳です。

ただし、RPFやRDF※2製造工程を省略して発電効率性を高めるためには、設計段階からさまざまな工夫が必要でした。

主な廃棄物発電の手法の一つであるRDFによる発電(ごみ発電とも呼ばれる)とは基本設計が異なり、細かく破砕された廃プラスチック類(ボイラー用燃料)のみを圧縮空気によって4本の投入口から専焼ボイラー(廃プラスチックだけを燃焼させるボイラー)に直接吹き込む方法をとっています。また、400℃という高温の発電用蒸気を発生させるために蒸気発生装置は特別に設計しました。

※1:Refuse Paper & Plastic Fuel
 (古紙と廃プラスチックを原料とした固形燃料)
※2:Refuse Derived Fuel
 (生ごみや可燃ごみや廃プラスチックなどから造られる固形燃料)


<苫小牧発電所全景>



<各地から集められた廃プラスチックの梱包品>

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年間19〜22万トンの廃プラスチックから電気が生まれる

サニックスの全国16工場に集められた産廃系廃プラスチックから、異物の除去やマテリアルリサイクルできるものを選別したあと150mm以下に破砕し、圧縮梱包して発電所に搬入されます。同社は苫小牧東港に隣接しているため、そのほとんどは船輸送を利用しています。


ストックヤード

発電用廃プラスチックの選別基準は、

などです。

こうして、発電に適した主に軟質系(フィルムやシート)のプラスチックが選別され、年間19〜22万トンが発電所に搬入され、発電燃料として使われています。

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難題は廃プラスチックの素材によって異なる熱量を均一にすることだった

廃プラスチック専焼発電所として特別な設計をした同発電所ですが、操業に当たってはさまざまな問題が起こりました。

発電所の稼働を前に、立ちはだかったのが熱量の問題です。素材の異なる廃プラスチック類は燃焼させたとき発生する熱量に差が出るため、これをどのような方法で均一化するか、また燃料搬送用のパイプ内で詰まらないようにし、ボイラーの吹き込み口までどのように安定した状態で送るか。これらの問題をどのような技術でクリアーするかについて検討委を重ねたそうです。

その解決策は次のような方法でした。

などで対応しました。

この方法を採用したことによってボイラー内の温度のバラツキをほぼ均一化し、定期点検時を除いて24時間連続運転を可能にしたわけです。同時に中央操作室(3交代制)での運転コントロール監視に関わる社員への負担は、当初の計画段階より大幅に軽減できたとのことです。


<廃プラスチックを30mm以下に破砕する前処理機>



<前処理機で30mm以下に破砕されたブレンド廃プラスチック類>


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発電量は24,000世帯の消費電力に相当する

発電設備は、まず発熱効率を高めるためボイラー内燃焼室には珪砂(砂状の燃焼補助剤)を利用した循環流動層方式を採用、蒸気発生装置は発電効率を最大限にするよう設計したこと、燃料をボイラー内に送り込むパイプ形状に独自技術を採用したこと、燃料を送り込むのにジェット加速器を利用したことなど、大きな特徴を持っています。

これらの技術開発によって、ボイラー内の温度は850℃以上で運転しているためダイオキシン類は発生しない、ボイラーは2基が設置されていて蒸気温度を400℃に維持する、などによって発電効率最大27.1%という高レベルを達成しました。

現在、ボイラーに投入する廃プラスチック類の燃料は1日当たり600〜700トンであるが、今後プラスチック破砕燃料の増産を図るため、非化石燃料化への代替を推進している製紙会社のボイラー燃料やセメントキルン用燃料等にも用途開発を取推中で徐々に適用拡大しているそうです。

発電機は1基で、出力は74,000kW。これは、24,000世帯が消費する電力に相当するそうですから、このサーマルリサイクルは、全国から注目されて当然かもしれません。74,000kWのうち、自社工場内で使用する電力は約15%、残り85%は北海道電力に供給しているとのことです。

高温、高圧の蒸気は、蒸気タービンを効率よく回し、発電したあとは空冷復水器(蒸気を水に戻す)によって回収し再利用しているため、一般的に問題視されている温廃水の発生は全くありません。煤塵はバグフィルターで回収、焼却灰とともに無害化して埋め立て処分をしているそうです。


<発電設備のフロー>



<システムフロー>



<タービン発電機>



<循環流動層ボイラーの全景>

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静脈→動脈→静脈→動脈産業であり続けるために処理量拡大への対応が課題

廃プラスチック類のサーマルリサイクルは、使用済みのものや、製造工程または加工工程で発生する端材などを再資源化するため一般的に「静脈産業」と呼ばれていますが、その廃プラスチック類を再利用して電気を作り出し、人々の生活に欠かすことのできないライフラインの一部を担っているわけですからこの発電事業は「動脈産業」とも言える訳です。その意味で、サーマルリサイクルは、静脈→動脈→静脈→動脈のサイクルを形成するあまり例を見ない産業と呼ぶことができます。

しかし、課題がないわけではありません。企業や事業所から排出される年間約500万トンの廃プラスチックうち、約200万トンがサーマルリサイクルに適していると同社ではみていますが、現在同発電所で利用しているのは、そのうちの10%弱です。残り90%の廃棄物発電・熱利用焼却で利用されている部分や、埋め立て・単純焼却などの未利用部分をどのようなシステム・技術を開発して再資源化するかという課題があります。

また仮に、現状以上に廃プラスチック類の引取量が増えるようなことになれば、これに対応した処理技術の開発や発電設備や他の用途開発を検討しなければなりません。増設計画は、当初の段階から計画に盛り込まれてはいましたが、立地条件や搬入経路、ストックヤード、さらには地域環境にも配慮する必要があるため、そう簡単に具体化できることではなさそうです。

「今後、いろいろな課題をどのようにクリアーするか、引き続き継続的に検討を進めることにしている」─このように今回の取材をまとめていただきました。

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