2016.06.16

韓国のプラスチック製容器包装のリサイクル最新動向

韓国のプラスチック製容器包装のリサイクル最新動向

はじめに

アジアをはじめ多くの国では、家庭から出るごみは殆ど分別されずに埋め立てられているが、日本、韓国、台湾ではそれぞれ特徴のあるリサイクルの仕組みが整っている。

 

韓国のプラスチック製容器包装の分別と処理については、2013年5月22日「資源の節約と再活用促進に関する法律」の改正により、制度や分離排出マークが変更されたことも有りあまり知られていない。

韓国循環資源流通支援センター(KORA)の協力を得て、2015年3月に続き2016年3月に2回目の現地調査を行ったので、加筆して報告する。

韓国の材質表示

韓国は2011年11月1日からプラスチック製容器包装の分離排出表示(識別表示マーク)を「ペット(PET)」「プラスチック」「ビニール」(△マークの中にハングル文字で記載)の3種類に改正施行した。そして、「プラスチック」と「ビニール」の下にHDPE,PP,PS等の材質表示が付く。

 

なお、「プラスチック」とは、単一素材の主にボトル状のもの。「ビニール」とは、プラスチック製フィルム類のことである。プラスチック製フィルムをビニールと言うのは、世界で日本と韓国だけである。

OTHERの意味は2種類以上のプラスチックを使用したラミネートを指し、韓国でも環境配慮設計やリデュースからOTHERの割合が増加している。(以降「ビニール」を「フィルム類」と記載)

韓国の合成樹脂の分離排出表示

図1 韓国の合成樹脂の分離排出表示(2011年1月改正施行)

上から、「ペット(PET)」、「プラスチック」、「フィルム類」

従前のプラスチック分別排出マーク

図2 従前のプラスチック分別排出マーク(PETを含めて7種類)

韓国循環資源流通支援センター(KORA)

2013年5月22日「資源の節約と再活用促進に関する法律」の改正より、既存の包装材再活用事業を担当していた6つのEPR協会が統廃合されて、韓国包装材再活用事業共済組合及び韓国循環資源流通支援センターが設立された。

 

既存6つの包装材料活用協会が各品目別に義務生産者(日本:特定事業者)から再活用分担金(日本:再商品化費用)を徴収し、再活用事業者(日本:再商品化事業者)へ支援金を支払う業務を集約した。

 

再活用義務生産者は、分担金を包装材再活用共済組合、製品別共済組合に支払い、KORAは、そのお金を支援金として民間選別場・民間収集体系・再活用事業者に支払う。

役職員数:役員2名、職員56名  予算規模:1,314億ウォン/年
1.再活用事業者数:
複合材質119、単一材質140、PETびん31、EPS230、金属缶51、紙パック9、ガラスびん24

2.再活用義務対象品目
包装材(4種):紙パック、ガラスびん、金属缶、プラスチック類
プラスチック類は、PETボトル、発泡(EPS等)、プラスチック、비닐류(ビニール)(フィルム類)
製品(5種):電池類、タイヤ、潤滑油、蛍光灯、養殖用浮子
2016年から、梱包サイレージ(PE材質) と 海苔を干すときに使う道具(PP材質)の2製品が 新規品目として追加された。

3.再活用義務生産者の基準
(企業規模の基準、包装材使用料の基準 双方に該当した場合に対象)
・単一無色
製造業 :前年売上高10億ウォン以上
輸入業者:前年売上高 3億ウォン以上の企業
・再活用義務対象包装材使用料の基準(プラスチックの場合)
合成樹脂(発泡合成樹脂を除外):製造業4t/年以上、輸入業者1t/年以上
発泡合成樹脂 :製造業800kg/年以上、輸入業者 300kg/年以上
参考 金属缶・紙パック:製造業4t/年以上、輸入業者1t/年以上
ガラスびん:製造業10t/年以上、 輸入業者3t/年以上

4.プラスチック製容器包装を使用した品物を韓国に輸出する場合の手続きについて
韓国の輸入業者が、生産義務者として次の手続きを行う必要がある。

<韓国の輸入業者に容器包装材の量に対して再活用義務を付与>
生産義務者(韓国の輸入業者)の申請
義務生産者は毎年4月15日まで前年度出庫輸入実績書を
環境公団及び共済組合へ提出する。

  • 環境公団:義務履行実績確認。
  • 共済組合:義務履行実績確認及び再活用分担金算出。
  • 提出方法:両側全て義務履行電算システム入力を原則として、FAX・登記郵便等も可能。
  • 各、機関別担当者:環境公団の場合、地域別の支社を通じて出庫輸入書を受付、共済組合 では該当チームで該当地域の義務生産者に対する出庫輸入書を受付る。

韓国環境公団 及び 共済組合の窓口
(韓国の輸入業者が問い合わせる、韓国語・英語、2016年4月現在)

 

・分離排出表示関連の問い合わせ先。
韓国環境公団(http://www.keco.or.kr
EPR運営チーム(032-590-4238)

 

・分担金関連の問い合わせ先。韓国包装材再活用事業共済組合
http://www.pkg.or.kr)
事業総括チーム(02-6948-8743)

廃プラスチックの収去(収去:日本の収集の意)

住民は、「PETボトル」「プラスチック」をプラスチックの回収箱に混合排出する。そして「フィルム類」をフィルム類の回収箱に排出する。また、発泡スチロールはかさばるのでそれらと分けて出す。

 

1.単独住宅、商店街地域、農村地域

住民は、地域で指定された分離排出場所(日本:収集ステーション)に出す。
自治体もしくは自治体が委託した民間回収業者が、他の収集品毎に曜日別に収去

市民会館前の分離排出場所

写真:市民会館前の分離排出場所(ソウル市内)

2.共同住宅

ソウル市や仁川市などの都市部には、多くの高層共同住宅が建設されている。

ソウル近郊の大規模共同住宅

写真:ソウル近郊の大規模共同住宅

団地毎に組織された婦女会が、古着、廃油、廃プラ、紙、等を収去業者に入札販売し、活動費にしている。生活廃棄物、生ごみ(飼料や堆肥に再利用できるも)は、自治体指定のそれぞれ専用のごみ袋(従量制・有料)に入れて排出する。

また、事業所なども共同住宅と同じだが、1,000m2以上、300kg/回 以上の事業者は、事業者の責任で排出することになっている。

「PETボトル」「プラスチック」「フィルム類」の収集と選別

(株)DSリサイクリング(選別センター) 朴社長

ソウル市、仁川市の6大規模共同住宅から「PETボトル」「プラスチック」「フィルム類」「発泡PS」を2000~2500t/月収去し、「PETボトル」「プラスチック」から樹脂別のベールを製造し、材料リサイクル向け(以下:MR)に販売し、「フィルム類」からはSRF向けベールを製造している。

SRF:固形燃料 Solid Refuse Fuel の略、以前はRPF(Refuse Plastic Fuel)と呼んでいた が2013年から改名。

 

「PETボトル」「プラスチック」は、袋から出して、手作業ラインで異物除去 → トロンメル(回転式選別機)で小中大サイズに、更に磁力や光学選別機を通して樹脂の選別を行う。

 

「PETボトル」と「プラスチック」の構成は、PETボトル(25~27%)、PP(14~15%)、PP(10%)、PSボトル(3%)、発泡PS(3%)、ガラス瓶・缶(5%)、容器包装以外のプラスチックや缶などの残渣(約40%)です。日本のプラ製容器包装と比べて食品残渣付着や製品プラなど異物混入が多いと感じた。

 

ベール価格は、石油価格の値下がりの影響で、昨年より約20%値下がりしているものもあった。 PETボトルとプラスチックのベールは有価販売されるので、昨年はKORAからの支援金は出なかったが、2016年度は石油価格低迷と国内景気鈍化による静脈産業活性化対策のため、PETボトル収去に20ウォン/kg、プラスチック収去に14.5ウォン/kgの支援金を配分することになった

2016年3月2015年3月
ベールの価格 PET270ウォン/kg 350ウォン/kg
ベールの価格 PP白 600ウォン/kg、 他 420ウォン/kg白 600ウォン/kg、 他 500ウォン/kg
ベールの価格 PE白 750ウォン/kg、 他 490ウォン/kg白 750ウォン/kg、 他 500ウォン/kg
ベールの価格 PS 500ウォン/kg 500ウォン/kg

表1:ベール価格

 

「フィルム類」は袋から出して、缶や紙を機械と手作業で除き、樹脂毎に選別することなく、そのままベール圧縮して出荷する。

 

フィルム類のベールに対して、2016年度は70~80ウォン/kg(2015年は40ウォン/kg)の支援金がKORAから支払われる。

トラック

写真:フィルム類のベールをSRF工場向けに出荷

韓国3R環境産業(選別センター)と単独住宅の分離排出現場 金社長

ソウル市の単独住宅、商店街地域から市の委託で、「PETボトル」「プラスチック」「フィルム類」を収去し、選別、それぞれのベールを製造。工場の作業はDS社と同じ。

収去品とトラック

写真:収去品をトラックから降ろす様子

材料リサイクル

大成リサイクリング 申社長

主に、DSリサイクリング(5-1)からPP,PEベールを購入し、ベールを解砕、粉砕、水洗、 してリサイクルペレット(MRペレット)を製造している。

リサイクルペレット価格
PP:良いもの 950ウォン/kg、パレット用 820ウォン/kg、
PE:白 1250ウォン/kg、黒 950ウォン/kg
(価格は2015年3月取材による)

写真:リサイクルペレットの製造ライン

写真:リサイクルペレットの製造ライン

写真:製品のリサイクルペレット

写真:製品のリサイクルペレット

(株)RM (PETボトル再活用工場) ムン工場長

(京義道華城市楊甘面 ソウルから南70km 2016年3月取材)
ムン工場長から、PETボトルの再生利用についてヒアリング

・自社やDS社などのプラスチック再活用選別工場から「PETボトル」ベールを 6000t/月 購入し、無色、有色(グリーン)、複合(茶色)のPETフレークを製造している。

PETフレークは、主に短繊維(FIBER)、シート(SHEET)、不織布等の多様な原料として販売されている。

 

・PETボトルのベールからは、単一無色 55%、単一有色(グリーン) 22~23%、複合材質(茶色)17%、のフレークが作られ、残渣が5%出る。それぞれの割合は、季節によって変動する。また、韓国にはボトルに直接印刷したものも3~4%有るが、一緒に再活用工程に投入されている。

 

・PETフレークは、単一無色:800ウォン/kg, 単一有色(グリーン):600ウォン/kg, 複合材質(茶色)400ウォン/kg,で販売される。(2016年3月取材時の販売価格)

 

・PETボトルのベールやPETフレークが有価販売されるので、昨年はKORAから支援金が出なかったが、前述の理由で今年度は支援金が単一無色94ウォン/kg、単一有色(グリーン)149ウォン/kg、複合材質(茶色)241ウォン/kgが配分されることになった。

サーマルリサイクル(廃プラからエネルギー回収)

(株)コリアリサイクルシステム(SRF製造) 李社長

「フィルム類」ベールを、DS社などから受け入れて、SRFを製造。
機械で金属缶などの異物を除去し、押し出し成形。臭いの問題で、市内から離れた立地だが、ここまでの運賃は、ベール工場が持つ。

 

「フィルム類」ベールの組成 OTHER 60%、単一樹脂 20%、水分・異物20%、KORAから支援金110ウォン/kg(2016年度)が支払われる。

 

SRFは、染色工場のボイラーを始め製紙工場のボイラー燃料、ビニールハウス暖房燃料、スチーム工場の補助燃料、発電所の補助燃料、セメント工場などで石炭及び石油の代替燃料として有価で販売。

SRF

写真:SRF

(株)キョンヒャン繊維 (SRFを使用する工場)

同社のウン フィサン監査役と、ボイラーメーカーの金テヨルさんから、SRF燃料の使用状況をヒアリング

・コリアリサイクルシステム(1回目に取材)などからSRFを300t/M購入し、捺染工場のボイラー燃料として使用している。

 

・上部からSRFを投入するトルネード式ボイラーは、下から吹き上がる渦エアーにより、プラスチックフィルムだけのSRFを専燃することが出来る。 (日本のRPFは、紙などを半分混ぜて燃焼性を上げている)

(株)ジンファEMI社(ボイラーメーカー)のパンフレットより
韓国では固形燃料を2013年からSRFに呼称変更したが、
この図では旧表示のRDFになっている。

(株)チョンウCNN(中間処理業者)

チェ ジョンギュ社長から、プラスチック残渣処理についてヒアリング。

・DS社などプラスチック再活用選別工場で発生する「PETボトル」、「プラスチック」、「フィルム類」を選別した残渣を処理費をもらってベール状で受入し、破砕・粉砕して非成形の燃料を製造し、工業団地のスチーム供給会社に納入している。

(他社では、製紙工場やセメント工場向けに、成形SRF燃料として販売されることもある。)
KORAからの支援金が出ないこの様な同業者は全国に140社有る。KORAからの支援金が出るSRF製造会社60社を加え、全国に合計 200社の廃プラスチック燃料を製造する会社が有る。チョンウCNN社は、残渣処理費としてカロリーの高いもの50~60 ウォン/kg、カロリーの低いもの70~80 ウォン/kgをDSなどの依頼元からもらっている。そして、チョンウCNN社は、スチーム供給会社に 10ウォン/kgを払って使用してもらう。

写真:ベール状残渣の入荷

写真:ベール状残渣の入荷

コンテナ

写真:粉砕した非成形燃料の出荷

まとめ

一般に、工場から排出されるプラスチックは同質材質が一定量集まるため材料リサイクルされる割合が多いが、容器包装等として使用されたフィルム主体のプラスチックは、ラミネート構造のものがあり、食品残渣が付着していて材料リサイクルには向いていない。

韓国では、「PETボトル」「プラスチック」(単一素材)と、複合素材OTHERの多い「フィルム類」とを、住民が分けて排出し、「PETボトル」「プラスチック」(単一素材)はソーティング装置で樹脂別に選別して材料リサイクル原料に、「フィルム類」は缶などの異物を除きSRFとしてエネルギー回収が行われていた。

そして、それぞれの残渣も、エネルギー回収されていた。また、KORA/李チーム長によると、再活用義務対象包装材でないプラスチック製品が混入していても、残渣処理工程で良質のSRFとしてエネルギー源になるため、住民は排出して良いことになったとのことであった。

 

韓国のプラスチック製容器包装の処理システムは、日本のシステム見直しの良い参考例になると改めて感じた。韓国と日本のプラスチック製容器包装のリサイクルフローを下記の表2,3に比較記載した。

表

(注)MR:材料リサイクル CR:ケミカルリサイクル
TR:サーマルリサイクル
(注)日本は市町村によってリサイクルフローが異なるため、プラスチック製容器包装を分別収集している例として参照ください。
表2,3:韓国と日本のプラスチック製容器包装のリサイクルフロー

台湾の四合一制度も基本的には韓国と同じで、「プラスチック」は、資源回収し材料リサイクルし、プラスチックフィルムは生ごみと一緒に収集してエネルギー回収で処理されている。そして、そして、全国統一ルールも住民には分かりやすい。

 

(台湾の四合一制度については、弊協会HPに紹介しているので興味があればご参照願いたい。)
http://www.pwmi.or.jp/public/taiwan/index.html

 

廃プラスチックのリサイクル・有効利用の手法は、近年著しい技術発展があり、今後も一層の進歩が期待されるが、あわせてその手法、システムの客観的且つ合理的な適正評価法の開発が重要である。リサイクルが目的になってしまうと、えてして環境負荷が増加することが多い。

 

要は「集めたものをどうリサイクルするか」ではなく、「どのようなものを何にリサイクルをするために集めるべきか」と発想を転換する必要がある。

 

汚れが少なく同一樹脂での回収や選別が可能な廃プラスチックであればマテリアルリサイクルに、複合(混合)樹脂あるいは汚れ・劣化のひどい廃プラスチックならばケミカルリサイクルやサーマルリサイクルで処理するといった方向に向かうべきであると考える。

 

そして、プラスチックとリサイクルについて,正しい知識と情報を広く浸透させていくことがますます重要であると考える。今後も広報活動を通じて実態に則したリサイクルの発展に尽力していきたい。

 

関連情報
・韓国ウォン為替レート
1ウォン = 0.11円  (2015年3月20日)
1ウォン = 0.096円 (2016年3月10日)
・発泡スチロールと発泡トレーの表示は、「プラスチック」PS
・用語は韓国語のハングル表示を漢字に変換した。
・비닐류 ビニールと読み、韓国ではプラスチック製フィルム類(文中:フィルム類)