2014.06.15

2014年6月掲載 ごみ収集体制変更で大きな成果 川崎市の取り組み

2014年6月掲載 ごみ収集体制変更で大きな成果 川崎市の取り組み

ごみ収集体制変更で大きな成果 川崎市の取り組み

川崎市は焼却ごみ削減に向け2013年9月から、プラスチック製容器包装の分別回収を全市に拡大する一方、普通ごみ収集回数を週3回から2回に減らしました。

 

08年に市が家庭ごみの排出実態を調査したところ、その半分が紙類とプラスチック類で占められていることがわかりました。この結果を踏まえ、11年3月から全市でミックスペーパーの分別収集を開始するとともに、南部地域3区(川崎区、中原区、幸区)については、プラスチック製容器包装の分別収集を先行実施することにしました。その狙いは、普通ごみ収集量の削減と資源化の促進によって焼却ごみを減らすことで環境負荷の軽減を図ることにあります。そして、昨年9月には、プラスチック製容器包装の分別収集が全市に拡大されることになりました。市は、現在4カ所ある焼却処理施設を15年度中に3か所に集約する予定です。

 

ごみ収集体制が変更された13年9月から本年2月までの半年間と前年同期間(12年9月~13年2月)における「ミックスペーパー収集量」、「プラスチック製容器包装収集量」、「普通ごみ収集量」を比べると下記グラフのようになります。ミックスペーパー収集量は2,132トン増の7,340トン、プラスチック製容器包装収集量は、新たに4区(高津区、宮前区、多摩区、麻生区)が加わったこともあり、4,368トン増の6,228トンとなりました。一方、普通ごみ収集量は14,058トン減の117,194トンと、プラスチック製容器包装とミックスペーパーの収集増加分(6,518トン)以上の減少となりました。

資源物とごみの収集状況
―2013年9月~14年2月までの収集量を前年の同時期と比較―

キャラクター

廃棄物減量指導員にご協力を!

※1:「川崎市廃棄物減量指導員」は、「川崎市廃棄物の処理及び再生利用等に関する条例」に基づき、1994年4月に設けられた制度。指導員は、ごみの減量や資源化の推進に向けた地域のリーダー役及び市とのパイプ役として活動している。

このように収集されたプラスチック製容器包装の80%※2がケミカルリサイクルされアンモニア、ドライアイスなどの原料になっています。そして残りはパレット、マンホールのふたなどに再生利用されています。

 

※2: かわさきFMで2014年2月7日放送の「庄司佳子のエコでハピネス」より引用。

川崎市におけるごみ収集方法においては、他にあまりみられないユニークなものがあります。それは、川崎北部地区の普通ごみ、粗大ごみ、資源ごみなどの一部を梶ヶ谷貨物ターミナル駅から末広町駅まで専用コンテナで鉄道輸送し、そこから浮島処理センターあるいは浮島埋立事業所まで車両運送していることです。一般廃棄物の鉄道輸送は、交通事情悪化に伴う運搬効率低下の改善、自動車排気ガスの抑制市など、環境負荷削減に寄与するシステムとして、1995年に全国で初めて導入されました。今回、分別収集が始まった北部地域のプラスチック容器包装類の輸送についても、コストや環境負荷の面で優る鉄道輸送が活用されています。

資源物とごみの収集マップ

自治体のごみの資源化・処理推進のモデルとして、今次の川崎市の取り組みが注目されています。

プラスチックの最新技術が生んだロングライフ食品 食品ロス削減にもひと役

本年3月に、NHK総合テレビで「サキどり/なが~く愛して!ロングライフ食品」が放送されました。この番組で取り上げられたロングライフ食品※1とは「保存料を使わず、容器・包装や衛生管理の技術により、”おいしさが長持ちする”食品」ということで、その実現には、食品用プラスチック容器包装技術・素材の進化・高度化が重要な役割を担っていることが分かります。

 

現在、ロングライフ食品としては、ご飯、麺類、パンなどの主食、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、おでん、ごぼうサラダ、肉ジャガなどの惣菜類までその範囲が広がっています。番組では、賞味期限300日という豆腐も紹介されていました。

 

番組で取り上げられていたロングライフ容器は、酸素吸収バリア層がポリプロピレン樹脂層の間に挟まれた構造となっており、外部からの酸素のみならず容器内の残酸素さえもここで吸着してしまうため、微生物増殖(腐敗)を抑止し、食品の美味しさを保持することができます(下図参照)。

■インスタントカレーのレトルトパウチ

プラスチック袋のレトルト食品は1940年代にアメリカで開発され、日本では68年にカレーのレトルトパウチが商品化されたのが始まりです(大塚食品「ボンカレー」)。レトルトパウチは耐熱・寸法安定のためのPET(ポリエチレンテレフタレート)、強度保持のためのPA(ポリアミド)、シール・耐熱性のためのPP(ポリプロピレン)のフィルムと酸素バリア・光遮断のためのアルミ箔を重ねたもので、これにより中身の乾燥化・風味低下の防止、微生物侵入の遮断、油の酸化防止が可能になりました。レトルト食品の登場は日本の食生活を大きく変えることになりました。

インスタントカレーのレトルトパウチの表

■無添加味噌のカップ包装

発酵食品である味噌は、空気に触れると、褐変(褐色化)したり、カビが発生したり、味が落ちたり、あるいは発生した炭酸ガスで膨張したりすることがあります。そこで、味噌のカップ包装は、カビの発生、風味の低下を防止するための機能を有するものでなければなりません。また、落下、振動、圧迫への耐衝撃性・剛性、あるいは充填時の状態を保持するための水分バリア性の機能を持ち合わせたものであることも必要です。様々な機能を有するプラスチックをうまく組み合わせれば、これら要求を満足させることができます。味噌のカップ包装は、その要求される機能が部位によって異なるため、ふたの部分とカップ本体とでその素材構造が大きく異なっています。

無添加味噌のカップ包装の表

■マヨネーズのポリオレフィン積層ボトル

いろいろな料理に重宝されるマヨネーズ容器は、従前はガラス瓶が中心でした。その後、プラスチックのブロー成形※2ボトルが開発されたことで、割れにくさ、軽さ、絞り出しやすさといった点が消費者に評価され、今では、プラスチックボトルが主流となっています。マヨネーズボトルは一見、単一の樹脂でできているようにみえますが、実際は、酸素バリア性、密封性などの機能を有する様々なプラスチックフィルムが重ねられています。ガラス瓶入りマヨネーズが開封すると日持ちしないのに対し、プラスチックボトル入りのものが開封後も長期保存・使用が可能なのは、ボトルを構成するプラスチックの「機能」をうまく活用しているからです。

マヨネーズのポリオレフィン積層ボトルの表

現在、日本で発生する「食品ロス」(まだ可食なのに捨てられてしまっている食べ物)は、年間約500万~800万トンにのぼります。これは、日本のコメ収穫量(約850万トン)にほぼ匹敵する値です。他方、世界では10億もの人々が十分な栄養のとれない飢餓状態にあるといわれています。飢餓に苦しむ人々がいる中で、大量の「食品ロス」を出すことは倫理上許されることではありません。日本は食糧の多くを輸入に頼っています。数百万トンになる「食品ロス」とは、飢餓に苦しむ人々から食糧をとりあげそれを捨てているといえなくもないのです。「ロングライフ食品」の登場は、「食品ロス」低減の一つの回答ともいえます。しかしながらそれ以上に大切なのは、やはり食べ物を無駄なく使いきるということを習慣化し、生活のあり方を今一度見直してみることではないでしょうか。

 

※1ロングライフ食品:番組で扱った『ロングライフ食品』は、「保存料を使わず、容器・包装や衛生管理の技術により、”おいしさが長持ちする”食品」と定義。市場に出回っている賞味期限の長い食品がすべて、上記のロングライフ食品に含まれているわけではありません。また、保存料は「微生物による腐敗や食中毒」を抑える目的で扱われる添加物という定義に則っています(NHKホームページより)。

 

※2ブロー成形:プラスチックの加工法の一種。ペットボトル等の中空製品を作る際に用いる方法。

日本プラスチック工業連盟 http://www.jpif.gr.jp/
NHK総合テレビ「サキどり/なが~く愛して!ロングライフ食品」2014年3月2日放送 http://www.nhk.or.jp/sakidori/backnumber/140302.html