ドイツ環境政策ジャーナリスト・中曽利雄氏の環境事情便り
開設のご挨拶(プラスチック処理促進協会・広報部)
現在わが国で最も多く使われるキーワードは環境(エコ)や気候温暖化ではないでしょうか。
我々は環境汚染、地球温暖化、廃棄物、食料、資源問題など多くの課題を抱えています。
これら問題を解決するには、法制や経済・社会システム、技術の開発や個人のライフスタイルにいたるまで幅広い対応が求められていますが、そのプロセスにおいて海外の事例を学んできたと言えます。環境分野においては、とりわけ、敗戦国であり、経済や人口、国土の規模において類似するドイツを手本にしてきました。この15年、環境法制、中でも包装廃棄物を中心とする廃棄物管理においては、《拡大生産者責任》などドイツのことを参考にしてきたと言えるのではないでしょうか。
しかしながら、ドイツはわが国では《環境先進国》と言われ、何かにつけて引き合いに出されながらも、歴史、気候風土、地理、自然観、経済・社会・政治構造、国民性など両国の周辺条件が異なっているという事情を十分に認識せずに、ドイツの制度をうわべ的に手本にするという冒険も行ってきたのではないかと思われます。たとえば、身近な日常生活に係わるごみや廃棄物問題などでは、廃棄物法制への十分かつ正しい知識だけではなく、法の執行・運用実態が分からない点も多く、本当にドイツを手本として良いのか、との疑問も湧いてきます。
《連邦制》を国是とするドイツにおいては、各州に憲法もあり、権限も強く、連邦法令制定への関与権もあると聞いています。また、国民の地方・地域愛、郡や都市間の地域の多様性はわが国以上だと言われています。他方、EUの主要国として環境政策や立法に置いて影響力を行使する反面、EUからの制約もあります。環境団体や消費者団体も活発であり、一般消費者の意識や行動などもわが国のそれとは違うように感じられます。しかしながら、これらの点は実際のところはどうなのでしょうか。
今回、このような疑問に少しでも答えるコーナーを開設(連載)することにしました。
このコーナーでは、社会主義国家の東ドイツを含むドイツで35年以上の在住経験があり、過去15年にわたって《月刊廃棄物》誌上や他の雑誌・新聞に環境政策や立法について寄稿されてきた中曽利雄氏に日常生活に係わるドイツの環境や廃棄物問題について市民の視線で分かりやすくお伝えしていただくことにしました。
第1回目は、氏の経歴の紹介を兼ねてミュンヘン大学での留学経験と東ドイツでのコンビナートの仕事、東西ベルリンの壁の崩壊とドイツ統一から始まります。その後、ほとんどの西側ドイツ人も知らない、統一とともに消滅した東ドイツにおける《循環経済》の担い手《SERO・二次資源循環システム》について報告されます。引き続いて、わが国に大きな影響を与えたドイツの包装政令と事業者へ課された《生産者責任》の代行組織である包装廃棄物回収・リサイクルシステム《デュアルシステム》、リターナブルやワンウェイ飲料容器とデポジットなどの問題について解説される予定です。その中では環境や廃棄物政策にまつわる裏の事情や私的体験も織り込まれます。このコーナーは年に4ー5回更新します。ご期待下さい。